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トレンデレンブルグ現象とは、もともとは先天性股関節脱臼患者の特徴的な歩行を説明するために名付けられました。トレンデレンブルグ現象の原因となる股関節外転筋の筋力が低下する理由は疾患や病態、障害により説明できます。

ところが臨床では純粋な股関節外転筋の筋力低下は認められず、解剖学的な問題も認めないにも関わらず、トレンデレンブルグ現象が出現することがあり、片麻痺患者によく見られる跛行の一つとして挙げられます。こうした現象を「トレンデレンブルグ様現象」と定義して、片麻痺患者によく見られる内腹斜筋とトレンデレンブルグ様現象について深堀りをさせていただきます。

今回の内容はおそらく、片麻痺患者におけるADL動作を改善するポイントや股関節疾患で見られるトレンデレンブルグ様現象の運動療法にも通ずる内容になると思います!
さっそく、トレンデレンブルグ様現象について解説していきたいと思います!

トレンデレンブルグ様現象を深堀り!

3つの傾向があるトレンデレンブルグ様現象

まず、片麻痺患者におけるトレンデレンブルグ様現象は3つの傾向があります。

内腹斜筋横線維の活動が重要

図1のように、体表に電極を貼付し立位での側方への体重移動時の移動側および非移動側の筋電図学的検討を行ったところ、立位での側方への体重移動時には内腹斜筋横線維の活動が重要であることがわかりました(図2)。

体重移動の際、仙腸関節には剪断力が生じますが、内腹斜筋横線維はそれを防ぐ作用として関与しています(図3,4)。

つまり、内腹斜筋横線維は動作保持においてとても重要な役割を担っている筋肉なのです。
しかし、内腹斜筋の筋緊張が低下している片麻痺患者では、立位での側方への体重移動時に骨盤が安定しないため、麻痺側の仙腸関節への剪断力を小さくしようとし、図5の様な特徴的な姿勢となります。こうして起こる代償運動の正体がトレンデレンブルグ様現象だと考えています。

運動療法の考え方とポイント

内腹斜筋横線維の筋活動は、仙腸関節に負荷がかかる姿勢を保持することで引き出せます。立位での側方への体重移動時の仙腸関節への負荷に耐えられる内腹斜筋横線維の筋活動を促すため、まずは座位での練習による小さな負荷から開始し、立位、そして立位での側方への体重移動へと徐々に負荷を上げる様にしていきます。

 

①体幹直立位での端座位保持練習

 坐骨支持で端座位を保持する練習を行うと、寛骨には上方への反力がかかる一方、仙骨には上半身の重みによって床方向への力がかかります(図6)。

そのため仙腸関節には剪断力による負荷がかかり、内腹斜筋横線維の筋活動を引き出すことができます(図7)。

端座位を保持させた状態で、セラピストがさらに仙腸関節に剪断力がかかるよう圧をさらに加えても良いでしょう。これは立位保持でも同様の操作が有効です。

②立位保持練習

直立位を保持する練習でも、仙腸関節に生じる剪断力を防ぐために内腹斜筋横線維の筋活動を引き出せます。
仙腸関節には剪断力による負荷がかかり、内腹斜筋横繊維の筋活動を引き出すことができます。

ただし、両側下肢で支持するため仙腸関節への負荷は分散され、立位での側方への体重移動よりも負荷は小さくなってしまいます。そのため、直立位で内腹斜筋横線維の筋活動を強化するには図8の様に患者の両肩から足部に向かってセラピストが圧を加える様にします。圧を加えると床からの反力が大きくなり、仙腸関節に生じる剪断力も増え、内腹斜筋横線維の活動を段階的に促すことができます。

③立位での側方への体重移動保持練習

座位や立位での内腹斜筋横線維の活動が得られるようになったら、図9のように立位での側方への体重移動保持練習でさらに内腹斜筋横線維の活動を引き出します。この時に内腹斜筋横繊維の収縮を触知しながら行うと正しく運動を行えているか確認できます。

まとめ

立位で片側に体重を移動した時に骨盤を水平に保つには、内腹斜筋横線維の活動が最も必要です。麻痺側の内腹斜筋横線維の筋活動が低下すると骨盤を水平に保つことが難くなります。加えて、仙腸関節に負荷がかかるため、それを減らそうとして代償的にトレンデレンブルグ様現象が起こります。内腹斜筋横線維の活動は、仙腸関節への剪断性の負荷をかける練習を行うと促すことができます。

今回の内容は「脳卒中運動学」の書籍を参考に文章を作成しております。さらに深く病態を理解し、より具体的な理学療法を学びたい方や、臨床実習生を指導する立場でより的確に指導をしたい方、臨床実習で多くの経験を積みたい方は是非、本書を手に取ってください。

あなたの臨床がたくさんの方の笑顔につながりますように。

参考図書

脳卒中運動学

監修:鈴木 俊明
編集:嘉戸 直樹, 大沼 俊博, 園部 俊晴

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