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今から14年前の2008年6月、私は常に不安と戦っていました。理学療法士になって3か月。目の前の患者に何をしたら良いのか「分からず」、自信を持てないでいました。その不安が「やってしまった…」と痛感したのは、それから数か月後のことです。

腰椎圧迫骨折で入院した方を担当した私。順調に回復し自宅に退院したのですが、数か月後には大腿骨頸部骨折で入院し、人工骨頭置換術を行ったのです。この方を再び私が担当することになり、さっそく病室に伺いました。挨拶を済ませ、リスク管理を行いながら離床を図ろうと私は「○○さん、体勢を変えたいので一度枕を外しても良いですか?」と言った時です。その方は「枕外すと背中が痛いのよ」と答えました。

え…?と思い、確認すると胸椎の伸展が起こらず、上位頚椎だけが伸展して、背臥位が困難になっていました。圧迫骨折した部位は腰椎でしたが、背臥位獲得に必要な胸椎伸展の可動域を維持する体操や指導を十分に実施していなかったのです。このまま胸椎の伸展可動域が得られず、さらに手術した股関節の可動域や筋機能が回復しなかったら…転倒リスクはより高まってしまいます。

「やってしまった…、もっと早くこうした視点をもって取り組んでいれば…」と痛感した瞬間です。こうした経験から、目の前の患者の「状態」だけでなく「その先」を見据えながら、何をしたら良いのかが「分かる」ことが大切だと考えるようになりました。そうすれば、自信をもって仕事ができると思います。

もし、あなたが私と同じような気持ちを抱いているなら、今回ご紹介する内容を、是非参考にしてください。そして、先を見据えた理学療法が提供できるようになってください。

腰椎圧迫骨折について深堀り解説!

転倒などをきっかけに「腰椎圧迫骨折」を呈する方は、高齢者ほど多くなります。
腰椎圧迫骨折は椎体骨折で、第11胸椎から第2腰椎の胸腰椎移行部に好発し、激しい痛みから、日常生活が困難となり、QOLが低下します。この骨折の多くは、椎体の前方が潰れる楔状椎となり、椎体が後弯することに伴う動作障害や体幹の可動域制限が出現します(図1)。

理学療法ではまず、後弯を主体とした機能低下の改善を図りながら、離床を進めていくことが重要になります。しかし、入院期間中だけでなく骨癒合が得られるまでの間は、脊椎に過度なストレスを加えると、骨折の修復を阻害し、場合によっては椎体偽関節を発生させてしまう可能性もあります(図2)。このため、圧迫骨折に対する理学療法は、「椎体前方部にストレスが加わらないような姿勢や動作指導、そして環境設定を行いながら退院を目指す」ことがポイントになります。

理学療法ではまず、痛みを指標にして離床を行うようにしてください。例えば、背臥位姿勢で痛みが強い場合は、椎体前方部が離開する負荷が過剰に加わり、骨の修復を阻害していると予測します。経過を見ながら痛みのない範囲で機能改善を図り、背臥位姿勢が獲得できるかをみていきましょう。今後の立位姿勢の獲得も含め、可能であれば枕を外した背臥位姿勢の獲得や、その肢位でのエクササイズが大切だと私は考えています(図3)。

また脊椎が過度に後弯した肢位は、椎体前方部に過剰な圧縮負荷が加わり、これも骨の修復を阻害してしまいます。特に胸腰椎移行部の骨折の場合、頭部が前方へ変位した姿勢をとるだけでも、椎体前方部には圧縮負荷が加わるため、十分な配慮が必要になります。理解力のある症例であれば、コルセットの重要性について説明すると同時に、座位姿勢や立位姿勢時の頭部の位置も指導すると良いでしょう(図4)。

さらに椎体の後壁に損傷がある場合、骨折が脊柱管内におよび脊髄や馬尾神経を圧迫することがあるため、より注意が必要です。こうした椎体前方部にストレスが加わらないような姿勢や動作指導、そしてコルセットやベッドサイドの環境設定を行いながら、痛みを指標として離床を図り、後弯を主体とした体幹の可動域制限の改善を図ることが、「退院後の先」を見据えるうえでも大切です。

ただコルセットを装着して離床を促し、動作を反復的に練習させた理学療法ではなく、退院後の先の機能も見据えた理学療法を是非、提供してください。

今回の内容は書籍「臨床実習生および若手PTのための理学療法実践ナビ 運動器疾患」を参考に文章を作成しております。さらに深く病態を理解し、より具体的な理学療法を学びたい方、臨床実習生を指導する立場でより的確に指導をしたい方、臨床実習で多くの経験を積みたい方は是非、本書を手に取ってください。圧迫骨折を含めたそれぞれの運動器疾患のポイントはもちろん、実習生にとってはレポート作成のポイント、指導者にとっては指導のポイントも解説され、大変分かりやすくなっております。

あなたの臨床がたくさんの方の笑顔につながりますように。

参考図書

臨床実習生および若手PTのための理学療法実践ナビ 運動器疾患編

編集:園部 俊晴

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