私たちの臨床で、現病歴や既往歴に「パーキンソン病」がある症例に出会うことは、非常に多いです。パーキンソン病は「適正な薬物治療と症状に応じたリハビリテーションを行うことが極めて重要」と報告されています(図1)。 今回のRINSHO PICKSでは、「パーキンソン病の症状に応じたリハビリテーション」を深堀りし、臨床の一助になる情報をお届けします。
パーキンソン病は個人差がありますが、50〜60歳から発症し、ゆっくりと症状が進行する原因不明の指定難病で、歩行などの自動運動の開始やリズムの形成、筋緊張の調整を行う大脳基底核(中脳黒質、線条体など)が障害される疾患です。このため、動作が緩慢となりやすく、無動や振戦、強剛の3大症状が出現します。こうした症状の重症度としては、「Hoehn & Yahr の重症度分類(以下、HY 分類)」がひとつの目安にリハビリテーションが行われています(図2)。
HY 分類から症状を予測し、介入時の介助量や転倒などのリスク管理をしたうえでリハビリテーションを行っていきますが、このとき重要になるのが「薬剤のコントロール」です。薬物療法はパーキンソン病治療の第一選択であり、服薬においては症状の日内変動があることを念頭に介入をしていきます。 例えば、初回では方向転換時に足がすくんでいたのにも関わらず、次回介入時では問題なく行えていた場合、薬剤コントロールの影響を視野にいれます。そして、本人やご家族に1日の服薬の持続時間や生活リズムを聴取し、介入時間の配慮を行うことが大切です。また、副作用として低血圧も挙げられますので、介入時のバイタルサインは必ず測定するように心がけてください。 こうした薬剤のコントロールを配慮した上で、リハビリテーションを行いますが、この時とても参考になるのが、「臨床実習生・若手PTのための理学療法実践ナビ 脳血管疾患編」です。是非、一読し理学療法の参考にしてください。
パーキンソン病のリハビリのポイント!
さて、基本的な内容を押さえたうえで、パーキンソン病の症状に応じたリハビリテーションを深堀りします。主訴やニーズに対して、評価を行い、運動療法によって維持・改善できることなのか、それとも住宅改修や福祉用具などのサービスが必要なのかを判断しながら、今その方にとって一番必要なリハビリテーションを行っていきます。この時、パーキンソン病特有の姿勢を考慮しておくことが大切です(図3)。
【段階的に抗重力位へシフト】
一般的には、パーキンソン病による2 次的な廃用症状(関節可動域制限や筋力低下など)に対して、筋力強化運動や自転車エルゴメーター、トレッドミル歩行練習などの複合的なリハビリテーションが行われています。しかし、パーキンソン病特有の姿勢に対しては、腰曲がりや首下がりの姿勢が挙げられ、これらの姿勢改善を図るには、単に上記の運動だけでは不十分です。
こうした姿勢の原因はジストニアや筋強剛が原因と考えられており、筋強剛は屈筋で強く、その結果として腰曲がりや四肢の屈曲を出現させます。実際に、腰曲がりを有するパーキンソン病患者の腹部を触れてみると、腹部の皮膚や筋肉がとても緊張していることがあります。そのため、姿勢改善には、腹部などの屈筋群や軟部組織の柔軟性を評価し、改善することが最初の治療のポイントになりますので、覚えておいてください。
腹部などの屈筋群や軟部組織の柔軟性が得られることで、伸展可動域が改善し、身体重心が前方に戻ることで、2 次的に生じた四肢の屈曲が改善する場合があります。これは、首下がりやピサ症候群においても同様で、屈曲(側屈)側の筋群や軟部組織の柔軟性を評価し、改善を図ります。(図4)
【姿勢改善のポイント】
パーキンソン病特有の姿勢を考慮し改善を図ったら、徐々に抗重力位での姿勢保持や修正の練習を行っていきます。方法は何でも良いですが、鏡などを用いてフィードバックしながら練習を行ったり、テーブルや壁を用いて難易度を調整しながら練習を行ったりすることが大切です。そしてこの時、足圧中心についても注意を払いながら練習を行ってください(図5)。
パーキンソン病患者の座位・立位姿勢では、骨盤が後傾し、身体重心が後方に移動することで足圧中心が後方に移動することがあります。そのため、前足部への荷重を促すようにタオルを踏んでもらうことや、刺激を入れながら足圧中心を前方に移動する練習は非常に効果的です(図6)。
こうした運動療法を実施しながら、視覚や聴覚、触圧覚などの刺激を入れた運動療法や自転車エルゴメーター、トレッドミル歩行練習などの複合的なリハビリテーションを行うことが重要です。是非、臨床の参考にしてください。
参考図書
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